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Posted by - 2020.07.06,Mon
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Posted by 新矢晋 - 2013.12.07,Sat

よそのお宅のウサミミイメージで書いたもの。名前は深幸くん。
えんこー的な事をやっていたりやっていなかったりするようなちょっとひねてる子。
ロナウドとデート(?)する話。






恋人じゃないなら


 鏡とにらめっこをしはじめてから、かれこれ三十分になるわけで。
 甘いダッフルコートにするか、辛めのモッズコートにするかってだけでも悩みどころだし、ブーツで媚びてみようか普通のスニーカーでしれっと行くか、そもそもトータルをどうすればいいんだろうセクシーなのキュートなの?!
 ……でも、久し振りに会うからってお洒落していったところで、あの童貞刑事が気付くとは思えない(実際は俺が童貞食べちゃってるけどそういう問題ではない)。だいたいなんであの人のためにお洒落しなきゃなんないの、別に恋人じゃ……ないのに。
 なんだかむしゃくしゃしてきたから、俺は服をその辺に放り出したままふて寝した。


「深幸くん! すまない、待ったか?」
「……別に」
 なんでこんな恋人同士みたいな会話してるんだろう。結局白のファーつきコートまで着てトータル甘めのピュアっぽい感じにしちゃってるし。こういうの趣味じゃないのに、多分刑事さんはこういうの好きだろうなーって思いついちゃったから仕方なく着てきてあげただけだけど。
 待ち合わせ場所もただの駅前で、このあとも食事に行くだけだからそんなに気合い入れなくてもよかったんだ、ほんとは。もやもやしていた俺の頭に刑事さんが手を乗せて、
「深幸くんはいつもかわいい服を着ているな。よく似合っているぞ!」
 だなんて、ばか、服の良し悪しなんてわかんないくせに!

  ※  ※  ※

「……ここ?」
「ああ、美味いぞ!」
 ……普通、デート(じゃないけど!)でラーメン屋に連れてくる? なんか薄汚いし。おじさんたちはホテルのディナーとか話題のイタリアンとかお寿司とか連れてってくれるのに。
 雰囲気もへったくれもない店内で小さな机挟んで、チャーシュー麺ひとつ、なんて。あ、俺は味噌ラーメンで。
 ここのラーメンは本当に美味いんだ、ってハードル上げちゃってさ。いつか君を連れてきたかったんだなんて笑うのは反則だと思うよ、(実質)童貞のくせに!
 待ち時間が短いのも安いお店っぽいというか、お喋りの時間も無いじゃん。いや別にいらないけどね?
 湯気たててるラーメン鉢が二つ机に運ばれてきて、机に置かれればスペースほとんど無いし、プラスチックのお箸安っぽいし、でもお腹減ったから食べるけど。
「……!」
 値段はホテルディナーの十分の一以下なのに、美味しい。くそう。何より向かいで食べてる刑事さんの幸せそうな間抜け面が、悔しいけど、悔しいけどかわいくて悔しい。
「……口に合わなかったか?」
 心配そうな顔でこっち見ないでよ、だったらこういうとこ連れてこなきゃいいのに。別に、と言ってからずるずるラーメンすすってみせたら、気に入ったのだろうと判断したらしくまた自分の鉢に向かうんだから単純。

  ※  ※  ※

 腹ごなしがてらうろうろしてたらゲームセンターがあった。誘ってみたら案の定難色を示されたけど、構わず中に入るとついてくるんだからちょろい。
 特にお目当てがあるわけでもなく、うろうろと狭苦しい通路をうろついていたらクレーンゲームのコーナーでふと足が止まった。
 犬だ。多分柴犬。制服を着て、まさに犬のおまわりさん、といった風なぬいぐるみがケースの中に窮屈そうに積み重なっている。
「……それが欲しいのか?」
 なんとなく眺めていると背後から刑事さんが覗き込んできて、少しケースの中を眺めてから小銭を取り出した。
「得意なの?」
「いや、学生の時やったきりだ」
 ……なんなんだろ、この人。かっこいいところでも見せたいわけ? なわけないか。多分、純粋な厚意でもって、俺に何かをしてやりたいと思っているのだろう。俺にというか、他人なら誰にでも厚意を大盤振る舞いしてるんだろうけど。
 真剣な眼差しを横から見てると、ほんっと、無駄にかっこいい。
 やる事も無いしぼんやりと眺めていると(断じて見惚れていたわけではない)、不意に振り向かれて変な声が喉から出た。
「とれたぞ」
 ぽすん、と手の中に入れ込まれたぬいぐるみ。犬のおまわりさん。……誰かさんに似てるって思ったから見てたなんて、絶対に言ってやらない。
「……ありがと」
 ぼそぼそと言ったお礼に、嬉しそうに笑う。それ多分俺の役目だよね、なんでお礼言われてる方が嬉しそうなんだろう。ばか。

  ※  ※  ※

 その後駅前まで戻ってきて、夜はこれからだよねって落ち着かなくなるべきは俺じゃなくて刑事さんだと思うんだよね。それなのに、振り返った刑事さんの第一声ときたら。
「それじゃあ気を付けて帰るんだぞ」
「……は?」
 ここで? お別れ? 小学生じゃないんだよ?!
 思わず絶句した俺を不思議そうに見下ろす刑事さんは何も気付いていないようで、じわじわ腹が立ってくる。この俺が期待してるっていうのに、いや期待っていうか普通この流れだとやるよねってだけだけど、兎に角こんなところで解散なんて俺の沽券にかかわるの!
「……ホテル行かないの」
 不機嫌な声を出してみせると、刑事さんは目を丸くしてからおずおず俺に声をかける。
「その、行きたい……のか?」
 言わせないでよ馬鹿じゃないの。ぷいとそっぽを向くと明らかに慌てた気配がして、暫く悩んでいる気配もして(ていうかこの人わかりやすい)、咳払いがひとつ聞こえてから小さく内緒話のように囁いてくる低い声。
「行こうか……その、ホテルに」
 誘い文句としては下の下だけど、このくらいで許してあげないといつまで経っても行けやしないんだから。
 振り返ってあげて、いいよ、ってちょっとだけ声を柔らかくして言うだけでぱっと表情が明るくなるんだから、この人本当に俺より八つも年上なの?
 そうは言っても男二人でラブホになんて入れないしそもそも安っぽいところは嫌だし、適当なビジネスホテルに入って服を脱ぐ。脱ぎ散らかした俺の服は刑事さんが小言を言いながらもたたんで置いておいてくれるから、俺は勝手にシャワーを使うのだ。
「ベッドまで運んで」
 バスルームを出たところで両手を伸ばすと、苦笑混じりに歩み寄ってきた刑事さんが俺を抱き上げてくれる。
「けーじさんはね、一日でも俺を独り占めできるありがたみがわかってないよ」
「そうか?」
 きょとんとした顔が腹立つから、むぎゅっと鼻をつまんでやる。顔をしかめた刑事さんはふと眉を下げて、怒っているのか、なんて馬鹿みたいなこと訊いてくるからほんと頭悪いよね。頭の作り自体は結構いい部類だと思うんだけど。
「いっぱい気持ちよくしてくれたら許してあげる」
「……努力する」
 神妙な顔で俺をベッドに下ろしたのは多分、本当に俺が怒っているのだと思っているんだろう。ばか。
 ……最近は刑事さんになら何されたって気持ちよくってつまりは最初から俺の負けで、俺がいちばん馬鹿ってことなんだけど。


《終》

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