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Posted by - 2020.07.06,Mon
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Posted by 新矢晋 - 2013.09.11,Wed
即興二次小説で制限時間30分で書いたもの。
寂しめ? 片想い。





雪が降る


 これがあんたの望んだ平和なんだろうか。


 世界は生まれ直し、そして幾度目かの冬が来た。
 しんしんと降り積もる雪はひとを凍らせ、音を吸い取り、すべてを覆う。
 俺はただ、雪を見ている。
 ――雪は嫌いだ。
 真っ白くて目が痛くなるようなその場所は、春になればいっぱいにレンゲが咲くはずの場所。
 そこに立ち尽くす俺の後ろにはもう足跡もなく、掌は雪が乗ってもすぐには溶けないくらい冷え切っていた。
 雪は真っ白で、俺の愚かさも罪も不安も痛みも全部ぜんぶ隠してしまう。
 この世界もぜんぶ隠してしまえばいいのに、なんて、くだらない妄想。
「こんなところにいたのか」
 雪をかきわけて近付いてくるその人に、俺は笑いかけた。
 その人はほっとしたように表情を緩めて、それから俺の真横までやってきて俺の姿を改めて見て眉を寄せた。
「ずっとここにいたのか? 風邪をひいてしまうぞ」
 俺の髪や肩に積もった雪を払い落とす大きな手。雪なんてすぐに溶かしてしまうあたたかい手。
 俺はされるがまま棒立ちで、そっと俺の頬に触れた掌の熱さに身が竦む思いがした。
「こんなに冷たくなって。早く戻ろう、温かいものでも飲んだ方がいい」
 俺の手を引くその人の、背中が広くて遠くて。
 その人が来る時に出来た細い道を広げながら、歩く道すがら、俺は一度きつく目を閉じた。
 ああ、雪が眩しい。


 あんたは雪に似ているよ。
 真っ白で、優しくて、でもひとを殺すくらいに冷たくて、俺の心を凍らせる。
 でも、春が来たら溶けて流れて小川になる雪とは違って、あんたは俺に背中を見せ続け思い知らせる。
 けして手に入らない。
 俺がどれだけ手を冷やしたとしても、雪はいつかは溶けてしまうのと同じように。
 俺がどれだけ愚かになっても、あんたは俺よりも愚かで、だから、……俺のものには、ならないんだ。


「ロナウド」
「ん?」
 ほら、返事をするその人は振り返りもしない。
 俺が楽に歩けるように雪をかき分け踏み固めてくれているのがわかるから、責めることも出来ない。
「……頑張ろうね」
 好きです、俺のものになって、他のひとばかり見ないで、背中じゃなくてこっち向いて。
 また言えない言葉が俺の中に降り積もってゆく。
「ああ、皆で協力し合って頑張ろうな!」
 ――こんな時ですら、「皆」としか言ってくれない。
 やっと振り向いたその人に笑ってみせる。
 こんな世界クソくらえだし、雪に埋もれてしまえと思うのに、笑顔と人助けばかりが上手くなる。
 また雪がちらちらと降り始めた。
 雨なら紛れて泣けたのに、と俺は笑いながらそんなことを考えた。


《終》

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