Posted by 新矢晋 - 2013.02.28,Thu
主ダイだかダイ主だか。
幼少時代の思い出捏造しつつ冬の幼馴染みさん。
幼少時代の思い出捏造しつつ冬の幼馴染みさん。
貸し借り
「どっどどうしよう怒られるよぉ〜!」
「そうだね」
小学校の校庭で数人の子供がしゃがみこみ頭を突き合わせて声を潜めている。
心底弱りきって眉を下げている黄色のトレーナーを着た子供は、そのどんぐりのような目で助けを求めるように向かい側の子供を見た。
その視線を受け止めるのは冷めた目をした、妙に大人びた雰囲気の子供。癖っ毛がくるくると丸まる頭を傾げ、相手を見る。
「だいちがノーコンだからでしょ、あやまってきなよ」
「やだやだ校長先生こわいじゃん!」
「しじま、怒られるぞ〜」
「泣いちゃうかもな〜」
「ややめろよぉ!」
大地と呼ばれた子供が周囲から囃されぶんぶんと頭を振るのを、向かい側から呆れたように眺める子供。それからすくりと立ち上がった。
「こ、ことり?」
大地はその子供、幼馴染みである湖鳥の名を呼び不安そうに見上げる。その眼差しを見下ろして、湖鳥と呼ばれた子供は何を考えているのかわからない顔で淡々と。
「めんどくさいから、おれあやまってくる。早くかえりたいし」
「……へ、」
間抜けな声をあげた大地を置いて、戸惑い二人を見比べる子供らを置いて、すたすたと校長室へ歩いていく湖鳥。あんまりそれが堂々として自然だったから、誰もそれを止めなかった。
次の日、罰として校長室の掃除をやらされていた湖鳥を、大地は窓の外からこっそりと眺めていた。
「……あの時の貸しを返すべき。だから奢れ」
「も〜この借り返すの何度目よ!まあ肉まんくらいイイけどさあ」
渋々肉まんとピザまんを買い、肉まんを賢しい幼馴染みの湖鳥に差し出して大地は唇を尖らせた。
「お前ね、何かにつけあの時の貸し持ち出すのやめなさいよ?」
「肉まんうまい」
「聞けよ!」
マイペースに肉まんを頬張る湖鳥に嘆息し、大地はピザまんをにかぶりつく。早々に食べ終えた幼馴染みがじっと視線を送ってくるのを無視して食べ続けていたが、青い青い目の眼力に負けて端をちぎって差し出した。
目を輝かせて直接こちらの手に食いついた幼馴染みを眺めながら、大地は自分の指を舐める。
「よく食べるよなあ、お前」
「だって大地よりデカイし」
「二センチしか変わんないでしょーが」
ぺちんとデコピンをする大地を不満げに見る湖鳥は、ひょいとパーカーのフードを被るとポケットに手を入れる。大地はくしゃくしゃと紙袋を丸めてゴミ箱に捨ててから、自分の耳を指差しながら幼馴染みへと問いかけた。
「今日は何聞いてんの」
「ん……Diana Krall」
「……ナニソレ」
湖鳥は首を傾げるとフードの中からイヤホンを片方引っ張り出す。それを差し出し、聞く?とだけ言う口元から白い息。
白いイヤホンの片割れを受け取って耳に引っかけた大地は、真横で目を閉じる幼馴染みがいつからか彼女を作らなくなったことを不意に思い出していた。
《終》
「どっどどうしよう怒られるよぉ〜!」
「そうだね」
小学校の校庭で数人の子供がしゃがみこみ頭を突き合わせて声を潜めている。
心底弱りきって眉を下げている黄色のトレーナーを着た子供は、そのどんぐりのような目で助けを求めるように向かい側の子供を見た。
その視線を受け止めるのは冷めた目をした、妙に大人びた雰囲気の子供。癖っ毛がくるくると丸まる頭を傾げ、相手を見る。
「だいちがノーコンだからでしょ、あやまってきなよ」
「やだやだ校長先生こわいじゃん!」
「しじま、怒られるぞ〜」
「泣いちゃうかもな〜」
「ややめろよぉ!」
大地と呼ばれた子供が周囲から囃されぶんぶんと頭を振るのを、向かい側から呆れたように眺める子供。それからすくりと立ち上がった。
「こ、ことり?」
大地はその子供、幼馴染みである湖鳥の名を呼び不安そうに見上げる。その眼差しを見下ろして、湖鳥と呼ばれた子供は何を考えているのかわからない顔で淡々と。
「めんどくさいから、おれあやまってくる。早くかえりたいし」
「……へ、」
間抜けな声をあげた大地を置いて、戸惑い二人を見比べる子供らを置いて、すたすたと校長室へ歩いていく湖鳥。あんまりそれが堂々として自然だったから、誰もそれを止めなかった。
次の日、罰として校長室の掃除をやらされていた湖鳥を、大地は窓の外からこっそりと眺めていた。
「……あの時の貸しを返すべき。だから奢れ」
「も〜この借り返すの何度目よ!まあ肉まんくらいイイけどさあ」
渋々肉まんとピザまんを買い、肉まんを賢しい幼馴染みの湖鳥に差し出して大地は唇を尖らせた。
「お前ね、何かにつけあの時の貸し持ち出すのやめなさいよ?」
「肉まんうまい」
「聞けよ!」
マイペースに肉まんを頬張る湖鳥に嘆息し、大地はピザまんをにかぶりつく。早々に食べ終えた幼馴染みがじっと視線を送ってくるのを無視して食べ続けていたが、青い青い目の眼力に負けて端をちぎって差し出した。
目を輝かせて直接こちらの手に食いついた幼馴染みを眺めながら、大地は自分の指を舐める。
「よく食べるよなあ、お前」
「だって大地よりデカイし」
「二センチしか変わんないでしょーが」
ぺちんとデコピンをする大地を不満げに見る湖鳥は、ひょいとパーカーのフードを被るとポケットに手を入れる。大地はくしゃくしゃと紙袋を丸めてゴミ箱に捨ててから、自分の耳を指差しながら幼馴染みへと問いかけた。
「今日は何聞いてんの」
「ん……Diana Krall」
「……ナニソレ」
湖鳥は首を傾げるとフードの中からイヤホンを片方引っ張り出す。それを差し出し、聞く?とだけ言う口元から白い息。
白いイヤホンの片割れを受け取って耳に引っかけた大地は、真横で目を閉じる幼馴染みがいつからか彼女を作らなくなったことを不意に思い出していた。
《終》
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