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Posted by 新矢晋 - 2012.12.14,Fri
ツイッターで流していた短文をまとめました。
シチュは何でもありのごたまぜです、死ネタもありあり。

ろなみみ50 その3


あんたは馬鹿じゃない。
むしろ頭の回転は速い方だし、直感的な行動は得意だし、人の心の痛みがわからないような冷血漢ではないと思う。
「どうした、寒いのか?」
……恋人が黙って抱き着いてきた時の反応じゃないよ、それ。
//こういう時に限って鈍感になるんだね



ああ、泣きそうな顔をしてるね。
何故と言われたって、身体が勝手に動いたんだからしょうがない。
あんたを守って死ぬなら、一時でもあんたの傷になれるなら、俺の事を少しでも哀れんでもらえるなら、生きながら息絶えるよりずっとましだろう。
//こんなエンディングも、悪くないと思う。



「あれ、ロナウド唇割れてるよ大丈夫?」
「ん?ああこんなもの舐めておけば平気だ」
「駄目だって悪化するよ……これ、ほとんど使ってないからあげるね」
……彼と別れた後、貰ったリップクリームを塗ってみた。
レモンの匂いがした。
//唇の柔らかさについて考えてみた



おままごとでもいい。
あんたはいつか相応しい相手を見付けて、結婚して、小さいながらも立派なマイホーム買って、子供が出来て、家族の為に毎日働いて、休日は家族サービスして、年をとって、俺の声も名前も忘れてしまうのだから。
今はおままごとみたいに、キスして。
//恋人ごっこ



手を繋ぎたいキスしたい。
あんたの横顔を眺めながらそんな事ばかり考えていた俺は今、あんたの背を眺めながらただ触れたいと、それが無理ならせめてその背を守りたいと祈るのだ。
//恋が愛にかわるまで



「ロナウドはばかだから、風邪なんてひかないと思ってたよ」
天使のような笑顔でそう言う君の手が、俺の髪を撫でる。
「俺、言ったよね?俺が『みんな』の次なのは我慢できるけど、ロナウドが『みんな』の為に無茶するのは我慢できないって」
優しい優しい君の声が、熱のせいかなんだか冷たく聞こえる。
「ロナウドなんか、このまま風邪こじらせて死んじゃえばいいんだ」
歌うように囁く君の名を呼ぼうとして、咳き込む。
君はすっくと立ち上がるとそのまま俺を振り返りもせず立ち去って、俺は言うことをきかない身体で取り残された。
――そして熱にうなされながら、夢を見る。
誰かの、細くて折れそうな腕が、俺を守るように抱いていた事を思い出す。
いつも傍にあった温かで優しいものがするりと腕の中から滑り落ちて、初めて知る喪失の痛みに目覚めた俺は視界が歪んでいる事に気付いた。
握った拳で目を擦る。
どこからが夢だ。
どこまでが夢だ。
動かない身体に鞭を入れ、ベッドから抜け出し部屋の扉へと向かう。
君に会いたい。
君の顔を見ないと、安心して眠れそうにない。
覚束ない手で扉を開けようとしたところで向こうから扉が開かれて、勢い余った俺はそのまま向こう側に居た誰かに抱き着いていた。

――扉を開いたらいきなり抱き着かれた。
ぎゅうっと抱き締めてから、熱にぼんやりと濁った目が俺を見て力無く笑う。
名前を呼ばれながらぺたぺた顔を触られて、そのまま満足したように寝落ちされた。
……待て、この長身をベッドまで運べってか。
あちこちぶつかりながら彼をベッドまで運んで寝かし付ける。
子供みたいな寝顔がなんだか憎たらしくて、頬をつついたらうっすらと目を開けて俺を見て嬉しそうに笑うから、まったくかなわない。
俺は、大きな子供の額にそっとキスをした。



指がもう動かない。
ああ、俺が帰らないと、心配するかな。
俺が居なくてもちゃんとご飯食べてね。
自分の事も大事にしてね。
それから、それから、ああ、もう頭も動かないや……、
(おれのこと、わすれないでなんて、いえないよ)



君の隣にはいつも幼馴染の彼がいて、君の目はいつも彼を見ていて、
そして、君が彼を幼馴染としてではなく特別に愛おしんでいるのだと気が付いたのは、俺が君を特別な目で見ているからだった。
彼はいい子だし、きっと君ともうまくやっていけるだろう。
同年代の方が話だって合うし、君とは付き合いだって長いし、俺が割って入る隙など無い。
君の青い湖水のような瞳が、切実な熱を帯びて彼を見詰めている。
その色は俺が君を見る時のものと同じだ。
何度も諦めようとした。
だが出来なかった。
君が俺に笑いかけてくれる度高鳴る胸を、誤魔化す事なんて出来なかった。
君が彼を、彼だけを見ているとしても、俺は。
「ロナウド!」
大きく手を振る君の隣に立つ彼を羨みながら、俺は小さく拳を握り込んだ。



俺の将来の為だとかそんな言い訳をするくらいなら、嫌いになったとか飽きたって言ってほしい。
俺があんたを愛する事も、あんたが俺を愛する事も、罪なんかじゃない。
言い訳なんかいらない。
俺はあんたを愛している。
//「君以外、愛せないのに」



-110-



俺は死ぬ気であんたに告白した。
あんたは受け入れてくれた。
ねえ、それならもう少し、恋人らしい事したっていいんじゃない?
犬にするみたく頭を撫でられたって、嬉しくなんか、嬉しくなんか……
ああもう!
//子供扱いしないでよ。



あんたの理想を踏みにじり、あんたの大事なものを磨り潰し、あんたの夢を砕いたら、あんたは俺だけを見てくれるかな。
あいつを見る時のようなギラギラした目で俺を見て、俺の事だけ憎んで俺の名を呼んで。
愛してる。
//死ぬほど憎んで、僕だけを見て。



眠っているあんたの髪に口付ける。
ごわごわした硬質なひとふさを慈しむように。
目を覚ます様子の無いあんたの指に俺は指を絡ませて、そっと頬を寄せ瞳を閉じた。
「……もう終わりか?」
低い声が耳朶を擽り、ソファーから起き上がるあんたの前で俺はただ絶句して。

目を丸くしている君の額に口付ける。
次は鼻筋、それから頬。
「ま、待って、」
やっと我に返った君が伸ばしてくる手をつかまえて、その指先にも唇を寄せる。
……半端に火をつけた君が悪い、無垢な兎は狼に食べられるのがさだめだ。



君の隣で、君と同じものを見ているつもりでも、きっと君は俺より先のずっと尊い何かを見ている。
俺を救ってくれた君は、きっと皆をも救うだろう。
君は救世主。
この素晴らしい世界に舞い降りた、天使。
//きみのトナリ



「俺たちももういい年だ、老後の事なんか考えると……いつまでもこのままではいられないだろう?」
俺は、あんたの隣にいられるだけで良かったし、
籍を入れられなかろうが子供が出来なかろうが幸せになる方法を一緒に探そうと思ってた。
「君はまだ若いし、俺なんかにいつまでもかかずらって青春を浪費する事は無い。君ならきっと素敵なお嫁さんが見付かるよ、」
ああ。
足元がふわふわする。
聞きたくない。
聞きたくない。
//今更別れを告げるというのですか。



君はとても魅力的な男の子だから、
夜遅くに出歩くなんてもってのほかだし、
出来れば一人で電車に乗ったりしないでほしいし、
何ならずっと俺の家で留守番していてほしい。
君という天使に魅了される男は、俺だけでいいだろう?
//愛しさはやがて束縛へ。



隣で眠る彼の寝息が、俺の心臓の音にかき消されるんじゃないかと思ってしまう。
俺を信じてくれている彼を裏切るわけにはいかないのに、何だか彼からは甘い匂いがするし、触れている肌の滑らかさときたら絹のようだし、
「ろなうど、」
寝言で呼ぶなんて、嗚呼、反則だろう?!
//添い寝してくれない?



髪型を少し変えてみた。
いつもと違う雰囲気の服を着てみた。
「今日も可愛いな!」
……褒めてくれるのは嬉しいけど、俺は女の子になりたいわけじゃないんだよ。
俺は、一人の男として、あんたの隣に立つ事を許されたいんだ。
//カッコイイって言われたい



あんたの言葉は眩しすぎて、矮小な俺を焼き尽くしそうになる。
なのにあんたは俺に過大な期待をして、差し伸べた手を引っ込める素振りすら見せない。
ずるい。
ずるいよ。
星は太陽を追う事しか出来ないのに。
//太陽のように照らしてくれる



あなたをこうして抱く腕と、
あなたの名を呼ぶ唇と、
あなたを愛するこの心臓と、
ぜんぶぜんぶあげたって構わない。
それでもまだ、俺があなたを愛する熱量には届かない。
あなたが俺の世界だから、俺はあなたに世界をあげるよ。
//「たりない。」



-120-



水面に石を投げ込んだ。
白々した大きなお月様が消えて、また浮かぶ。
何度も、何度も、石を投げ込む。
(こら、魚が驚いてしまうぞ)
たしなめる声が聞こえて、ぎゅっと目を閉じた。
三つ数えてから勢いよく振り返っても、そこには誰も居はしない。
居はしないのだ。
//にじんでいくお月さま



熱を出して朦朧としている君が珍しく甘えてくるから、
からからの喉になんとか唾液を送り込んでからベッドに入った。
いつもより熱い君の身体が布団を温めていて、
とろりと濡れた目が俺を見上げるから、
思わず君にキスをした。
//添い寝してくれない?



一方的に電話を切った。
二人の距離はこんなに遠くて、俺だけイライラして馬鹿みたいだ。
缶ビールを一気飲みして布団に潜り込み、うとうとし始めた頃に鳴るチャイム。
ドアを開けた俺を抱き締める腕が誰のものか思い至るより先に、膝蹴りを入れていた。
……ごめん。
//「落ち込んでるから慰めに来てよ」



「ほら」
「……?」
「俺の膝においで」
言われるがままロナウドの膝に乗ろうとすると、押し留められ上体を引き寄せられた。
そのまま、彼の膝へ頭を乗せられぽんぽんと撫でられる。
彼が嬉しそうだから、恥ずかしいけどまあいいか。



ソファーが揺れたので雑誌から顔を上げると、
俺の隣に座ったロナウドが溜め息を吐いたところだった。
俺の手から雑誌を取り上げ、無理やり膝の上に頭を乗せてきた彼。
わしわしと髪を撫でるとまた溜め息が聞こえた。
「お疲れだねえ」
「ああ……」
彼がこんな風になるのは、仕事や何かで落ち込んだ時だ。
はっきりと愚痴を言ったりはしないけれど、
こうして俺に甘えてくれるのは信頼されている証のような気がして少し嬉しい。
膝の上にある大きな頭を撫でたり少し硬い髪を鋤いたりしていると、
寝返りを打った彼が俺のお腹に顔を埋め抱き付いてくる。
「……ん?」
吐息だけで訊ねて、俺はそっと背を丸めて彼の耳に口付けた。



「どうして」
泣き出しそうに唇を震わせて、君は目を伏せる。
「俺のことが好きなら、どうして」
「君の為だ。俺と君じゃ幸せになれない、もっと良い相手を見付けるんだ」
俺の襟首を掴む君の細い指。
「うそつき!ロナウドは自分が傷付きたくないだけじゃないか!」
違う、そうじゃない、そうかもしれない。



焦げ茶色の、後ろへ向かって跳ねた癖っ毛を、そうっと指ですく。
汚泥のこびりついた髪を一本一本くしけずり、水気を絞り、撫で付け整える。
「ロナウド」
呼んでもその瞼は開かない。
血の気の失せた頬を手のひらで拭って、冷たい唇に親指をかける。
「……俺、ロナウドに出会えて、嬉しかったよ。ありがと……ばいばい」
キスをした。
初めてのキスだった。
そして最後のキスになる。
さようなら、さようなら、恋心。



「ポッキーゲームしよ」
「どういうゲームなんだ?」
「えーと、ポッキーを両端から食べていくんだけど」
「ふむ、勝ち負けはどうやって決まるんだ」
「あー……勝ち負けっていうか……」
「???」
「いいから!はいくわえて!」
俺と彼がキスするまであと五秒。



「これで安心だろう、ゆっくり眠るといい」
……何をどう安心しろというのだろう。
一人用のベッドに二人、頭をしっかり抱きかかえられて。
ああ、心臓が口から出そうだ、ドキドキしすぎて気持ち悪くなってきた。
「胎児は母親の腹の中で母親の鼓動を聞いているというからな、まあ、俺は君の母親ではないが……」
ぽんぽんと頭を撫でられる。
ぴったり彼の胸にくっついた耳やら頬から伝わってくる鼓動よりも、自分の心臓がうるさくってどうしようもない。
「……どうした?まだ眠れないのか?
そうだな、じゃあ子守唄でも歌ってやろうか、あまり歌は得意じゃないんだが」
「あの、ごめん、ちょっと静かにしてて」
短く謝罪して黙りこんだ彼の手が、やっぱり優しく俺の頭を撫でるから、
俺はなんだか切なくて苦しくて眠るどころではないんだ。



「キスしよ」
「なっななにを言ってるんだ?!そんな、俺たちはまだ付き合い始めて一ヶ月で」
「もう一ヶ月!」
「しかし、」
少年の目が涙で濡れているのに気付いた男は口ごもる。
「……わかった、目を閉じてくれ」
男の声は、少し震えていた。



-130-



「なあ、セックスしないか」
真顔でそんな事を言うから俺は絶句するしかないわけで。
溜まってるのって訊いたら力強く肯定するし、
じりじり顔が近付いてくるし、
えっと、その、優しくしてクダサイ。
「確約はできないな」正直すぎるのは美徳じゃないよ!



「うまいか?」
「うん!」
男が買ってきた半額のドーナツを頬張って、少年は花開くような笑みを浮かべた。
些細な、安っぽい土産に心底喜ぶ少年をいとおしげに見詰めていた男は、
「ん、クリームがついているぞ」
「えっ」
ドーナツよりも甘いものを味わうために少年へと唇を寄せた。



「お茶置いとくね」
「ああ」
俺の方を振り返りもせず、難しい顔でパソコンに向かう彼。
作業用の眼鏡の向こうで細められている鳶色の目が、遠い。
何も言わずにその横顔を眺めていたら、ふと視線がこちらを向いて、顔が近付く。
こつん。
唇と同時に眼鏡もぶつかって、彼は照れ臭そうに笑った。



ソファーで雑誌を読んでいたら、いきなり背中が重くなった。
彼がのしかかってきたのだと気付いたのは頭に顎が乗せられたから。
「どうしたの」
「いや……」
雑誌を閉じて手招くと、いそいそ回り込みぴったり隣に座ってくる。
膝を示せば嬉しそうに頭を乗せて寝転がるのだから、これじゃあ大きな子供だ。



夕食の支度をする君の後ろ姿が無性にいじらしくて、何も言わずに抱き締めた。
「わ、何?危ないよ、」
抗議の言葉は無視して、顔を横に向けさせてキス。
ちゅ、ちゅう、と何度も啄んでからぺろりと舐めると、眉を下げ俺を見上げる君の唇が震えている。
……今度は、もっと濃厚な方がいいか?



あんたを好きになった俺の負け。
ああ完敗だ、どうしようもない。
「勝ち負けの問題なのか?」
「なんか癪だろ、俺ばっかり苦労して」
不貞腐れる俺を笑いながら抱き寄せたあんたは、こめかみにそっと口付けた。
「俺だってこれでも、毎日君が恋しくて苦しいんだが」
……やっぱり俺の負けだ。



「キスして」
その四文字が耳に届いた瞬間、かっと全身が沸騰するような心地がした。
盗み見た君の唇が柔らかそうで、それに触れる事の罪深さに身がすくむ。
「ねえ、」
君は泣き出しそうな顔をして俺に手を伸ばす。
駄目だ。
俺の罪をきっと君は許すから、そうしたら俺は君を離せなくなるから、だから。



「キスして」
その四文字を言うのに声が震えそうになった。
彼はまだ何かに怯えているのか迷っているのか、固く唇を閉ざして何も言わない。
「ねえ、」
鼻の奥がつんとして声が掠れる。
伸ばした手で顔に触れようとしたらびくりと仰け反られて、俺は、どうしたらいいかわからなくなる。



君は優しい子だから、峰津院の甘い言葉に騙されたんだ。
今日この時に至るまで君の目を覚ませなかったのは悔しいが、峰津院さえ倒せばまた君と共に歩ける。
俺は静かに携帯を握り、祈るように額へ押し当てた。
「……!」
俺の繰り出した拳が、彼の守護をしていた悪魔を倒し消滅させる。
細く華奢な彼はだが、折れない強い光を湛えた青の目で俺を睨んだ。
「あんたは何もわかっていない……!」
血を吐くような呟きの意図を理解する前に、彼の利き手に雷が膨れ上がった。
スキルの扱いが得意な彼の魔術などまともに受けては勝ち目がない。
俺が一気に彼へと距離を詰めて攻撃を繰り出すのと、
彼の雷が弾けるのはほぼ同時で、
俺は全身に激痛を感じながら最後に彼の目を見た。
青く青く、湖水のように澄んだ目は、泣いていた。



「どこが好きかって?」
彼は神妙な顔で頷いて、
「君は頭も良いし口も立つし芯も強いし、
行動力も責任感もリーダーシップも思いやりもあるし、
可愛くて綺麗でセクシーで、
どうして俺の恋人でいてくれるのかわからないんだ」
……どうして俺は言う前から頬が熱いのかな。
//好きな人の好きなトコ10個



-140-



君の姿をいつも探していた。
息の詰まりそうな路地に切り取られた空を見上げて、君の残照を抱いていた。
……これが恋だなんて、知らなかった。
恋ってものはもっと甘くて優しいものだと思ってたんだ。
こんなにむず痒くてじれったいものだなんて知らなかったんだ。
//今さら初恋だなんて



貴方と共に歩めなくても、触れる事さえ出来なくても。
貴方は俺の名前も知らなくて、俺の声も顔も覚えていなくても。
貴方は遠い空の下、前よりきっと素敵な生をいきていると、信じています。
//貴方の幸福を願います



スーパーへ買い物に行ったら笹飾りが置かれていた。
自由に願い事を書いて吊るせるみたいだ。
折角だしと二人で短冊を書きながらこっそりロナウドの様子を窺ってみると、妙に神妙な顔でボールペンを動かしている。
丁寧な文字で「家内安全」と書かれた短冊が笹に結ばれるのを見上げて、俺は小さく笑った。

何度訊いても教えてくれなかった彼の願い事。
気になった俺は、別の日にスーパーへ寄って彼の短冊を探す事にした。
沢山の短冊には些細な願いが溢れ、平和だなとほっとする。
その影に隠れるようにあった、繊細な彼の文字。
「Rが幸福でありますように」
……俺は、思わず彼の待つ家へ走り出していた。



必死で、ただ必死で、ロナウドにしがみつく事しか出来ない俺は、嵐のような行為に耐えるだけで。
繋がった場所は熱いのに胸の奥が冷えているのは、
俺を抱くロナウドが罪悪感に押し潰されそうな顔をしているから。
すまない、なんて、謝らないで。



褪せた鳶色の目は、荒涼とした大地そのものだ。
また誰か死んだんだね。
ロナウドは皆のリーダーだから、誰にも知られず涙を一粒二粒こぼして、
そうしたらまた立ち上がらなきゃね。うん。
ロナウドは正義の味方で、弱者の守護者で、だから誰より強くなきゃいけない。
悲しみとやるせなさを憎しみに転化してでも戦わなければならない。
どれだけ世界がくそったれで民衆は愚かで守るべき価値を見出だせないような有り様でも、
ロナウドはそれに気付いちゃいけない。
(でも俺は、)
ロナウドの背を撫でながら、静かな嗚咽を聞きながら、ああ世界が滅べばいいのにって願ってる。
だってそうだろう?
この先世界が救われたって、ロナウドは誰にも救われないままなんだ。
こんな世界を愛する事の出来ない俺じゃ、あんたを救う事すら出来ないんだ。
//(このままいっしょにいても、いい?)



知ってる?
初めて会った時に、あんたが魂ごと俺の恋心をもっていったんだよ。
鳶色の目に俺を写してほしくて、
低く俺の名を呼んでほしくて、
世界が滅ぶかどうかよりあんたが俺をどう思っているかの方が気になって仕方ないんだ。
こんな世界で何より欲しいものが見付かるなんて奇跡もう二度と起こりはしないだろうから俺は、必ずあんたを手に入れる。
必ずだ。
覚悟するといい。
//やっと見つけた、だから俺のものだ



「なあ、機嫌を直してくれないか」
そっぽを向いているのは、怒っているのもあるけど、顔を見たらほだされるからだ。
しょげた響きの声だけでも大分危ないってのに。
「君の顔が見たいな。どうすれば許してくれる?」
背中側から腕を回して、こんな時だけ優しく抱き締めるなんて反則だ。
//背中越しの体温



俺の幸せには形があって、それは背が高くて、鳶色の目で、大きな手をしている。
幸せと手を繋いで、同じ道を歩いて、ただ毎日ご飯が美味しくて、安らかに眠れることが俺はとても嬉しいんだけど。
ねえ、出来れば俺の幸せの幸せは、青い目をしてると嬉しいな。
//幸福の条件=隣に君がいること



俺はおかしくなったみたいだ毎日あんたの夢を見る。
馬乗りになってそう詰ったら、夢の中でも相棒なんだなって笑うあんたは何もわかっちゃいない。
もう壊してしまおうか、耐え難い、この薄氷を歩くような関係は。
決めたら後は、夢と同じようにあんたを喰らうだけ。
//毎日キスをする夢を見る



「海!!!」
「はは、元気だな」
わしわしと俺の頭を撫でる彼は、どうして俺がこんなにはしゃいでいるか知らない。
「じゃ、着替えてからね」
「後でな」
そう!
二人で、海で、水着!
きっといい身体してるよなあ。
海とかまさに彼のホームグラウンド感あるし、俺がトキメキを我慢出来ないのも仕方ないよね。



-150-

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