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Posted by 新矢晋 - 2013.06.14,Fri
遠距離恋愛中ロナ主。
名古屋に遊びにくる主人公をロナウドが歓待(?)


うちにおいでよ


 その日、栗木ロナウドは早朝から自宅の掃除に精を出していた。日頃から整頓されている室内を更に隅から隅まで磨きあげ、そう多くもないごみを纏めて袋に詰める。
 時間を確認してからごみ袋を提げマンションの階段を駆け降りるロナウドは、息を乱しながらもどこか機嫌良さげに口角を上げていた。


「バイト代貯まったから、今度名古屋に遊び行っていい?」


 東京に暮らす恋人からそう問われたのは一月ほど前の事だった。
 約300キロの壁を隔てた向こうにいる年下の恋人と久し振りに会えるとあってロナウドは張り切って休みをとったが、その代わり休み前は仕事に追われ部屋の片付けをする時間さえなかった。その結果こうして当日の朝に迎える準備をする羽目になったがロナウドはもとより余裕を持って起床するつもりでいたし、こうして恋人の事を考えながら恋人の来訪を待つというのも悪くはない。
 ごみを出し終わり部屋へと戻ったロナウドは時計を見上げ、それから浴室へと向かう。既に脱衣場には着替えが用意してあり、浴室内へその背が消えるや間を空けずシャワーの音。掃除で埃っぽくなった髪を洗い流し、少し汗ばんだ肌に泡の混じった湯が伝う。
 丁寧に体を流し終えたら浴室からあがり、体を拭いてからロナウドは洗面台へと向かった。鏡に顔を寄せ目を細め、剃刀を手に取り顔をあたる。何度か顔の角度を変えて、満足いく出来になったら今度はドライヤー。伸びてきたな、そろそろ切らなければなどと考えながら、少し癖のある髪を乾かし撫で付ける。
 用意していた着替えはラフなジャケットとジーンズで、それに袖を通してから一度鏡の前に立ったロナウドは、納得したように頷いた。
 リビングに戻りソファーに座り込んだロナウドはそわそわと時計を見上げる。……彼を、恋人を駅まで迎えに行くにはまだ早い。
 開いた足の間に垂らした手、手首の腕時計を無意識に指で擦りながら膝を揺する。俯いた横顔に髪の毛がかかり表情はよく見えない。
「……本屋に寄ろう」
 言い訳のように呟いてから、ロナウドは立ち上がり財布と携帯電話だけ持って玄関へと向かった。


 ──目的地へは、車で三十分もかからない。新幹線の停まる大きな駅。
 その駅構内の本屋で新書コーナーを冷やかし、新刊をチェックして、贔屓にしている作者の文庫を一冊買ってもまだ恋人が着く予定の時間には程遠い。
 ロナウドは焦れる気持ちを押さえながらコーヒーショップに入り、買った本を読みながらホットコーヒーを舐めるように飲んだ。一章読み終えたところでようやく予定時間が近付き、レシートを握り締め立ち上がる。
 ……そして恋人が通る筈の改札口の前、仏頂面で柱にもたれかかり、その癖内心ではうきうきそわそわとしながらその到着を待つ。
 何度か人の波が通りすぎ、その度に恋人の姿を探しては落胆していたロナウドが、四回目の人波を確認しようとした時にその少年は現れた。
 聡明そうな青い目と、色を入れた事の無さそうな黒髪。ロナウドよりも大分年下で、華奢な印象さえ与える細身の体はしかし、人混みの中でも溺れることなく真っ直ぐ歩いている。
 ……その、年下どころか同性である少年が、ロナウドの愛しい恋人だった。
「湖宵くん!」
 改札を抜ける恋人へと足早に歩み寄りながら片手を上げたロナウドに気付いて、少年はぱっと表情を明るくした。
 小さなトラベルバッグを引きながら足を早めるその姿、(ロナウドからすれば)華奢で(ロナウドからすれば)儚げで(ロナウドからすれば)天使のような様にロナウドは目を細める。
「久し振り、大きくなったな!」
「子供じゃないんだから、そう大きくなったりしないよ」
 大きな手で頭を撫でられながら苦笑した少年は、けれどもどこか嬉しげに目元を緩めている。
 ひとしきり再会を喜んだ後、自然な仕草で鞄を取り上げ歩き出したロナウドを眩しそうに見上げた少年は、ロナウドの腕に伸ばしかけた手を途中でのろのろと下げ何事もなかったように隣を歩く。
 ロナウドはそんな年下の恋人の遠慮になど気付かず、無造作に伸ばした手でまたわしわしと恋人の頭を撫でて声を弾ませる。
「どこか行きたいところはあるか?」
「んー……とりあえずお腹すいたかな」
「飯か……」
 少し考えてからロナウドは口を開いたが、
「そうだ、駅前に美味いラーメンを出す店が……あっ、いや、名古屋名物なんかの方がいいか」
 俺がたまに行く店なんだが、と言葉を濁した。
 そんなロナウドを見上げた少年は緩く瞬きをして、柔らかく唇をほどく。
「俺、ロナウドに会いに名古屋来たようなもんだから、観光はどっちでもいいよ。それより、ロナウドが見てるものや食べてるものが知りたい」
「そうか?よし、じゃあラーメンにするか」
 ほっとした様子で恋人を先導するロナウドの背中に、少年はそっと息を吐いた。


 ロナウドのいきつけだというラーメン屋は狭い店内にカウンター席しかないような硬派さで、恋人を連れてくるのに適しているとは言えない雰囲気だったが、少年は気にした風もなく席に腰掛けた。
「ここはチャーハンも美味いぞ」
 その隣に腰掛けながら常連ぶるロナウドの言葉に頷いて、少年はチャーハンセットを頼んだ。ロナウドは餃子とチャーシュー麺を頼み、出てくるまで他愛のない話をして時間を潰す。
 先にチャーハンセットのラーメンだけが出され、伸びないうちにとロナウドに促された少年は、お先に、と手を合わせてから割り箸を割った。
「あ、美味し……」
「そうか!」
 一口啜って呟いた恋人を嬉しそうに見て、遅れて運ばれてきたチャーハンとチャーシュー麺を受け取りカウンターに並べるロナウド。自分も割り箸を持ち両手を合わせていただきます!と食べ始める。そうして、大きく掬ったチャーハンをれんげで口に運んだり、勢いよく麺を啜ったりと、気持ちの良いくらいの勢いで食べていく少年を見ては目を細める。
 美味しそうにぱくぱくと食べている恋人が可愛くて仕方ないのか、
「……ん、セットのラーメンはチャーシュー一枚だけなんだな。俺のを一枚あげよう」
「わ、ありがと」
 などと甘やかしてしまう始末。
「美味そうに食べるな、そんなに腹が減っていたのか?」
 あーん、とチャーシューを口に運んでいた少年はぱちぱちと瞬きをして、ばつが悪そうに鉢へと視線を向ける。
 恋人のその微妙な恥じらいやらを察することもなく首を傾げたロナウドは、無邪気に笑った。
「ご飯を美味そうに食べられるのは良いことだ!沢山食べて大きくなるんだぞ」
「……いや、もうさすがに成長期終わったから」
 呆れたように言いながらも嬉しそうに笑う恋人の、その理由もわからない癖にその笑顔が嬉しくて。
 不意に恋人へキスをしたくなったロナウドは、それを誤魔化すために餃子を頬張った。


「折角だから少しぶらつくか」
 ラーメン屋を出てからそう提案したロナウドに、少年は難色を示した。不思議そうに見返すロナウドへ、逡巡の後一度唇を噛んでから呟く。
「俺、その……ロナウドといちゃいちゃしたい」
 羞恥を紛らわせる為か服の裾を握りしめ、ロナウドを見上げる少年はどこか必死で。
「直接会えたの久し振りだから、……こんなところじゃ手も繋げないし」
 普段はどちらかというと他人の感情を読んで合わせることの多い、相手の求めるものを差し出すことに長ける少年の珍しい主張……それも、いじましいともとれる願いに思わずロナウドは息を飲んだ。
 手を伸ばしかけて、途中でやめて、己の髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜてから可愛い恋人を見下ろす。
「じゃあ、もう、俺の家に行くか?」
 乾いた唇を舐め、少し揺れる声で。
「……うん」
 それにはにかむように頷いた恋人の姿に、ロナウドは名状しがたく度し難い衝動を感じていた。


 はやる気持ちをおさえて言葉少なに車を運転し、恋人を迎えるために完璧な準備をした自宅へと彼を迎え入れる。
 中へ入って玄関の扉を閉めた瞬間、少年はロナウドの首に手を回して背伸びをし、熱烈なキスをした。一瞬息を止めたロナウドも力強く少年を抱き、その唇を貪る。
 何度も口づけて、満足したように唇を離してなお少年はロナウドの腰に腕を回してしっかりと抱き付いている。その胴回りを確かめるように、ぎゅうぎゅうと。
「ロナウドだ……本物の、ロナウド……」
「はは、どうした?俺の偽物なんていないぞ」
 頭を撫でられて心地良さそうに目を細めた少年は、恋慕のきらめきを一杯に湛えた星空のような目でロナウドを見上げた。
「……駅で会った時からこうしたかった。ね、もう一回キスしてい、」
 少年の言葉が終わるより、ロナウドの口づけの方が早かった。熱い舌が口腔へ滑り込み、少年の柔らかな舌をとらえて愛でる。
 夢中で貪り合ってから、ゆっくりと唇を離して見つめ合う二人に言葉は無い。ロナウドは静かに唾を飲み込んでから、きつく恋人の手を握り、玄関より奥へと足早に進んだ。
 ……寝室へ向かうのすらもどかしくて、リビングのソファーに恋人の体を放り投げる。ジャケットを脱ぎ捨て馬乗りになる彼を見上げる少年の目は、期待と情欲で濡れていた。
「……加減出来なかったらすまん」
 は、と上擦った息を吐いたロナウドを見上げて少年は小さく笑う。
「いいよ、俺だって久し振りだから……ロナウドにめちゃくちゃにされたい」
 ひくりと喉を震わせたロナウドは、もう言葉もなく少年の白い喉に吸い付いた。


  *  *  *


「ロナウド」
「ん?」
 愛しい気だるさを楽しむ最中、不意に自らを呼ばわる恋人の髪を撫でるロナウドの指先は繊細な細工物にでも触れるかのよう。
「今度はロナウドが東京に来なよ、色々案内するからさ」
「ああ。スカイツリーに行ってみたいな」
「……案外ミーハーだね」
 くすくす笑いながらすり寄ってくる恋人を抱き締めながら、ロナウドは憮然とした様子で彼の額へと口付けを降らせた。
「着いてすぐに君の家へ行ってもいいが、それだと君が辛いだろう?」
 きょとんとした顔でロナウドを見上げた少年は、遅れてその言葉に含まれた暗喩に気付いて言葉にならない声をあげながらぽかぽかとロナウドの胸元を叩く。
 そんなささやかな抗議など意にも介さず、ロナウドはもう一度、今度は柔らかな唇へと目算をつけて恋人へと顔を近付けた。


《終》

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