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Posted by - 2020.07.06,Mon
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Posted by 新矢晋 - 2013.07.15,Mon
回帰後、ロナ主とジョーダイがキャンプに行く話。
ロナ主メインでジョーダイはちょっぴり。



有頂天カルテット


「キャンプ行こう」
「へ?」
 相変わらず唐突な幼馴染みの台詞に、志島大地はポテトを食べていた手を止めた。
「俺、キャンプでアイスクリーム作れるやつ買ったしさ」
「なんでそんなピンポイントな……」
「キャンプなんて子供の頃以来行ってないし、なあ、行こ?」
 幼馴染みの押しにもいまいち乗り気でない大地は、チキンナゲットに手を伸ばし考えながら口を開く。
「二人で行ったってあんま楽しくないだろ、ああいうのってワイワイするから楽しいんだし」
「あーそっか……」
 じゅー、と残り少ないオレンジジュースを飲み、ストローを噛んで紙コップを持ち上げて揺らす幼馴染みを呆れたように見る大地。
「あ」
 不意に声をあげてストローを口から離したものだから紙コップを落とし、その横倒しになった空の紙コップを放置して少年は声を弾ませた。
「他にも呼べばいいだろ?」
「他?」
「俺はロナウド呼ぶから、大地はジョーさん呼んだらいいよ」
「男四人かよ」
「気楽でいいじゃん」
 行こー行こーと足を揺らす幼馴染みに、大地は仕方ないなと苦笑した。


 トントン拍子に話は進み、ある週末に四人は揃ってレンタカーに乗り込んでいた。ドライバーにはロナウドが手を挙げ、ナビには譲が──人格はさておき、地理的感覚は職業柄強いのだ──任じられた。
 移動時間はそれなりに長く、最初こそいつものように下らない話をしていたがいい加減暇をもて余した後部座席に、ふと沈黙が流れる。ぽつん、と少年が呟いた。
「……しりとりしよう」
 小学校の遠足以来の暇潰し方法である。
 ロナウド以外は全く乗り気ではない車内で、少年はお構いなしに号令をかける。
「悪魔縛りしりとりー!ニカイアのア!からの……アリラト!はい大地!」
「へえ?!と、と、トランペッター!次ジョーさんね!」
「た……お世話になったなあ、タイホウ。クリッキー、『う』だよ」
「う?う……ウベルリ」
「リャナンシー」
「えーと、シルキー」
「キクリヒメ、ちゃん」
「メタトロン。……あ」
 おかしな間が空く。何やら言い訳をしようとしたロナウドの言葉を遮って、少年が楽しそうな声をあげる。
「ロナウドの負けー!後で罰ゲームね」
「ば、罰ゲーム……?!そんな話ひとつも、」
 ハンドルを握り困惑した様子で眉を寄せるロナウドになどお構いなしにはしゃぐ少年に、譲が半身だけ振り返って提案する。
「あんまり厳しいのはかわいそうだから、向こうで火起こししてもらったら?あれが一番めんどくさいし」
「むー……じゃあそうしよっか」
 渋々提案を聞き入れた少年から、ほっとした様子でハンドルを切るロナウドへと視線を流し、貸しひとつだよと小さく囁いた譲はにんまりと笑って手元の地図へと視線を落とした。

  *  *  *

 キャンプ場に到着した四人は、食事の準備とテント設営にわかれて作業を開始した。
 ロナウドは件の罰ゲームに従って点火の準備をし、当然少年はその手伝いについた為、大地と譲はテントの設営に向かう。
 そうして私物のバーベキューコンロに炭と着火材を並べる手付きは危なげなく、じっと見詰める少年に気付いたロナウドはふっと表情を緩めた。
「学生の頃によくやっていたからな。こういうのは慣れているんだ」
 ふうん、と相槌を打った少年は何か言いかけるように口を動かして、結局は何も言わずに箱から炭を取り出してロナウドへ渡した。
「……? どうした?」
「ん……いや……」
 言葉尻を捕まえられてなお口ごもった少年は、しかし結局は降参するように口を開く。
「ロナウドが学生の時に、俺も学生だったらよかったのにって」
「俺が大学生の頃、君は中学生くらいか? 立派に学生……」
「そうじゃなくて」
 不思議そうに瞬きをしてからようやく少年の真意に気が付いたロナウドは、ふっと笑ってから団扇を少年に握らせた。
「頼めるか?」
「……うん」
 差し出された団扇を受け取って、少年は一生懸命扇ぐ。暑そうに汗をかき真剣な表情でバーナーを使うロナウドの横顔を眺める眼差しは、どこか切なげな色を帯びる。
「湖宵くん」
 不意に声をかけられて、少年の目に光が戻る。ロナウドは火を使いながら、静かに言葉を続けた。
「君と俺の歩んできた時間が違うのは、もうどうしようもない」
「……ん」
「歳は八つも違うし、俺は刑事で、君は学生だ。……普通、知り合う事もないような組み合わせだ」
 だが、とロナウドは落ちてきた髪をかきあげる。
「だからこそ得られるものもある。まったく違う道を歩んできたからこそ、改めて色々なことをひとつひとつ共に経験することが出来る」
 横目にそっと、微笑んで。
「それはそれで、とても得難く素晴らしいと俺は思うぞ」
 少年は僅かに目を見開いて、それからくしゃくしゃと笑った。ロナウドもそれを見て満足そうに目を細めた、が。
「……それからだな、湖宵くん」
「ん?」
「俺じゃなくて炭を扇いでくれないか」
「え?……あっ、ああ!」
 ロナウドの指摘に少年はさっと頬を染め上げ団扇を取り落とした。慌てて拾い上げ今度は炭を扇ぎながら、まだ狼狽した様子で口を開く。
「ごめん、こういうの久し振りでその、うう」
 恥ずかしさで縮こまる少年を横目で見て、ロナウドはいとおしげに目を細めた。手を伸ばそうとして汚れた軍手が目に入りまた炭へと向き直ったが、しみじみと呟く声が柔らかな情に満ちている。
「君は凄く、可愛いな」
「やーめーてー!」
 悲鳴をあげながら団扇を動かすと強く扇ぎすぎて、火の粉が舞った。

  *  *  *

「肉だー!」
「肉だー!」
 目を輝かせながら唱和した二人の子供にロナウドは眉を寄せ、野菜も食べるんだぞと釘を刺す。
「まま、細かいことはいいじゃん。いただきまーす」
 無造作に肉を取り上げる譲に、子供は三人だったかとロナウドは嘆息したが、結局は肉を返しホイル包みを仕込みと自ら調理担当におさまったのだった。
 焼けた肉を取り分けたり、嫌がる子供らの皿に野菜を放り込んだりとまるで保護者のように働くロナウドは煩くもあるが、生き生きしているようにも見える。
「この辺り焼けたぞ」
 トングで肉や野菜をひっくり返し、端の炭に埋めたじゃがいもの具合を確認するロナウドをちらりと見た少年は、次にロナウドの前に置かれた申し訳程度に肉や野菜の入れられた皿を見て、眉を下げた。
「……ロナウド、食べてないんじゃない?」
「ん?合間に食べているぞ、気にしなくていい」
 額に浮かぶ汗を拭って笑うロナウドの皿が、よく見ると少し焼きすぎた肉や焦げた野菜ばかりだということに気付いて、少年は自分の皿から一番美味しそうな肉をつまみ上げてロナウドの前に突き出した。
「はい、あーん」
「え、いや、俺は……」
「あーん!」
 ずい、と突き出されたまま引っ込められる様子の無い肉と少年の顔を見比べてから、ロナウドは口を開ける。静かに咀嚼してから飲み込んで、まだ意味がわからないというように首を捻った。
「美味しい?」
「ああ、美味いが……」
 満足そうに目を細めた少年は、ロナウドの皿を取り上げるとその中身を自分の皿にあけ、空の皿は折り畳んでごみ袋へ放り込んだ。
 ロナウドが何か言う前に、
「次から俺の皿に入ったものの半分をロナウドにあげるから、変に偏った配分しない。わかった?」
 だいたい俺がやるって言ってもきかないし、と少年は溜め息を吐く。そのやり取りを眺めていた譲は面白そうに笑った。
「クリッキーいいお嫁さんつかまえたねえ。奥さんの言うことはきかなきゃあ」
 隣で笑いをこらえている様子の大地と少年は黙ってアイコンタクトをしている。ロナウドはどこか納得のいかない顔で、それでも逆らわず頷いた。
 ──それから、ホイルに包んで焼いたじゃがいもや、味噌を塗った焼きおにぎり、焼きそばまで食べて満腹になった四人はそれぞれ休憩していた。
「あ、アイス作ろうアイス!」
 そもそもこのキャンプの発端であるアイスクリームメーカー──プラスチックのボールに氷と材料を入れ、振ったり転がしたりするとアイスが出来上がるタイプのもの──を持ち出してきてはしゃぐ少年に付き合わされる大地。
 ロナウドと譲はその様子を眺めながら椅子に座り、だらだらと駄弁っている。
「たまにはアウトドアもいいねえ」
「そうだな、提案者の湖宵くんには感謝しないと」
 恋人バカー、と揶揄する譲にロナウドはそればかりは厳しい顔で反論し、いかに自分の恋人が客観的に見ても素晴らしいかを語る。はじめこそにやにやと聞いていた譲も段々嫌気が差し始めたのか、気のない相槌を繰り返す。
「聞いているのかジョー!」
「聞いてるってば、あっほらほら呼んでるよ〜」
 子供らが呼んでいるのを言い訳に椅子を立った譲に、ロナウドもまだ納得していない様子ながら続いたのだった。
  *  *  *

 水着に着替えて川原にやってきた四人のうち、大人二人は上着を着たままで、子供二人はさっそく川へと駆けていく。が、その背にロナウドが声をかけた。
「湖宵くん、君は色が白いから日焼け止めを塗った方がいい。後で痛くなってしまうぞ」
 駆けていく途中で足を止め振り返った少年は、少し困ったように眉を寄せる。
「日焼け止めなんて持ってきてないよ」
「大丈夫だ、俺が持ってきている。少し待っていてくれ」
 荷物を置いてある方へ小走りで向かったロナウドを見送ってから、少年は大地と顔を見合わせた。
「……お前んとこ過保護ね」
「うん……」
 困ってるんだ、と言いながらもどこか嬉しそうな少年の脇腹を大地がくすぐり一頻り冷やかしているうちにロナウドが戻り、不思議そうな顔をするのに何でもないとごまかしながら少年はロナウドから日焼け止めを受け取った。
 腕や体の前面に日焼け止めを塗り広げ、次に背中へ塗ろうとして苦戦する少年の手からロナウドが日焼け止めを取り上げる。
「俺が塗ってやろう」
 逡巡したもののこくんと頷いた少年を見下ろして、ロナウドは日焼け止めを手の上に出してその肌に触れた。
「んっ、」
 不意打ちの冷たさに身をすくめた少年に小さく笑いながら、大きな手を這わせ日焼け止めを塗り広げていく。
 ……どう見ても単なる手伝いではなく、恋人同士の睦みあいである。
 それを眺めながら、取り残された二人はげんなりと溜め息を吐いた。
「……あいつらは何なの、見せ付けたいの?」
「俺たちもイチャイチャする?」
「遠慮しマス」
 唇を尖らせた大地の頭に無造作に手を乗せた譲は、見上げてきたその恋人の唇へ盗むように口づけた。
 誰も気付いていない触れ合いに目を丸くしたのは大地だけで、当の譲もなんでもない事のように首を傾げ、何も言えなくなった大地はふいと視線を逸らした。
「あれ、大地どうした?」
 戻ってきた少年に訊ねられ口ごもった大地はごまかすように大きな声で、
「早く入ろうぜ!」
「大地くん!準備運動をしないか!」
 走り出そうとしたところをロナウドに捕まえられたのだった。

  *  *  *

 楽しい時間はあっという間に過ぎ、四人はまた車の中にいた。帰路は大地がドライバーをつとめ、後部座席にはロナウドと少年が座っていた。
 そして少年は、ロナウドにもたれかかってうたた寝をしていた。
「……ありゃ、寝ちゃった?」
 しぃ、と自らの口の前に人差し指を立てるロナウドに苦笑してから前に向き直った譲は、隣の大地に何事かを囁いて肩を震わせる。
 一方、自分にもたれかかって寝息を立てている愛しい恋人の寝顔を眺めるロナウドはその腕をそっと彼の肩に回し頬を頭にくっつけた。
 体温をわけあうことがこんなにも嬉しい。
 ロナウドは、そっと少年の髪に口付けた。




「……二人とも寝た?」
「みたい、目の毒だよホント」
 溜め息と、それからボリュームをおさえた笑い声。
「運転代わるとか言ってたのになあ……俺まだ長距離はキツイし、途中でどっか入って」
「あ、俺が代わるから大丈夫だよ」
「……へ? ジョーさん運転出来るの?」
「うん。これでも大人ですから」
「なら最初から言ってよォ?!」
「あはは、クリッキーたち起きちゃうよ」
 頬を膨らませた大地の横顔を眺め、譲は楽しげに笑った。


《終》

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