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Posted by 新矢晋 - 2012.06.21,Thu
回帰後、しれっと同棲しているロナウドとウサミミさんの話。
すれ違って拗らせてジョーちゃんを巻き込みましたとさ。

おかえりなさいが言いたくて


「また?」
 今月に入ってから何回目かの「今夜は遅くなる」コールに、俺は自分の表情が険しくなるのがわかった。
「すまん、今日は大物を検挙したから皆盛り上がっちゃって……」
「この間は新人さんが初めて始末書書いた記念だっけ?」
「ああ……まあ、皆何だかんだと理由をつけて飲みたいんだろうな」
「ロナウドが最後まで付き合う必要無いじゃん、そんなに飲めないくせに」
「素面が一人いた方が、酔っ払いの世話が出来るだろう?」
 ……わかってる。こうして電話しながらも彼は喧騒の向こうを気にしてる。責任感が強くてお人好しで、目前の世話を焼く事に夢中になると他の事なんてすっかり忘れてしまう彼は、俺がどんな気持ちでこの電話を受けているかも知らない。
「……わかった、気を付けてね」
「ああ。すまない」
 通話を終えると、しんとした室内に涙が出そうになった。
 待っている間に冷めきってしまったハンバーグを一人で食べて、布団に潜り込む。起きて待っていたって彼の帰りが早くなることは無いし、どんどん膨れ上がる寂しさに自分が押し潰されそうになるだけだという事はこれまでに学習していた。
 ――ロナウドと一緒に暮らすようになってから、なんだか一人で彼を待つ事が増えた気がする。どうしてだろう、俺は彼の傍に居たくて、彼もそれを望んでくれた筈なのに。こんなにも彼が遠い。ロナウドが、遠い。
 せめて夢に出てきてくれる事を願いながら、俺は目を閉じた。


 週末は、約束をしているわけではないがいつも二人で過ごしていた。普段は仕事を優先する彼も週末は俺の隣に居てくれるから、多少のすれ違いだって我慢出来た。最近は忙しかったから、彼に話したい事ややりたい事が沢山あって、俺はいつもより週末を楽しみにしていた。
 ――でもロナウドは、全然気にしていなかったらしい。
「湖宵くん、今日は夕御飯はいらないから」
 普段と変わらない調子でかかってきた電話に、俺はとうとう何かが切れてしまった。
「ロナウド、……ロナウドは、俺のこと何だと思ってるの?」
「……?湖宵くん?」
 全く察しの悪い、何の悪意も無い彼の声が、俺の身体を芯まで冷やしてゆく。
「ねえ、俺、寂しいんだよ。ロナウドが居なくて寂しいんだよ。最後にちゃんと話したのいつか覚えてる?俺たち恋人だよね、家族だよね、俺、ロナウドの家政婦さんじゃないよね……」
 一度口を突いた感情は止まってくれない。醜くて格好悪い俺のこころ。電話の向こうで黙り込んでいるロナウドはどんな顔をしているんだろう。
「もうやだ、俺、こんなのやだよ……ロナウドのこと好きだけど、好きだから、もう無理……」
「湖宵くん、落ち着いて……ちゃんと話そう、な?」
 漸く状況を理解したらしいロナウドは少し焦った声で何か言いかけるが、その向こうでロナウドを呼ぶ声がする。一瞬迷って沈黙したロナウドの、その迷いが許せなかった。
「今すぐ帰ってきて。じゃないと俺、他のひとの所に行っちゃうから」
 宣言して直ぐ様携帯の電源を落とす。そのままテーブルの上に放り投げて、自分はソファーに飛び込んだ。部屋の電話が鳴り響く中、俺は少しだけ泣いて、いつの間にか眠っていた。

 ――目を覚ましても、俺は一人だった。

 部屋の中を見回した俺は、彼が帰って来た気配の無い事を確認しながら、ああそんなもんかと納得していた。……しようとしていた。
 すっかり乾いた涙の跡を拭いながら自分の部屋へ向かい、ボストンバックに着替えや大事なものを詰め込んで、……無意識に、ロナウドに貰ったぬいぐるみを手に取っていて苦笑した。
 その時インターホンが鳴った。
 俺は跳ねるように立ち上がると焦るあまり転びそうになりながら玄関へ向かった。
 ――納得なんて出来るわけない、もう何だっていい。少し言いすぎたと謝って、それから、それから。
「ごめんっ、ロナウド……」
 勢いよく玄関の扉を開いた俺は、見慣れた、しかし待ちわびたものではない顔に固まった。
「や、お久し振りー……ってなんか俺、タイミング悪かったみたい?」
 玄関先でずるずるとしゃがみこみ泣き出した俺を、ジョーは困った顔をしながら抱き締めてくれた。
「たまたま出張で近くに来たからさ、新婚さんをからかってこうと思ったんだけど……いやあ、まさかシュラってるとはねえ」
 なんとか落ち着いた俺の話を聞いたジョーは、俺を膝に乗せた状態でソファーに腰掛け溜め息を吐いた。ロナウドほどではないにしろ、上背もあって手足も長いジョーに抱かれているとなんだか安心する。
「そりゃあクリッキーが湖宵くんに甘えすぎだわ。湖宵くんが爆発するのも無理ないよ。……でもね」
 俺の目元を指で拭いながら、ふとジョーは真剣な顔をする。
「湖宵くんも、クリッキーに甘えてたんじゃない?」
「俺、が?」
「そ。『俺がこんなに好きなんだからロナウドにも伝わってるに違いない』『ロナウドだって俺の事を好きでいてくれるに違いない』ってさ」
 何だか自嘲めいた、少し困ったような笑みを浮かべて話すジョーは、多分昔の自分を思い出しているのだろう。
「キミらは二人とも真面目だから、俺みたく遅刻なんてしないだろうけど……何ていうかな、ちゃあんと向き合って話さなきゃ伝わらないこと、世の中には沢山あるよ」
 そこまで言うと、「真面目な事言って疲れちゃったー」などとわざとらしく溜め息を吐いて俺の肩に顎を乗せたジョーは、俺の腰を抱く手に僅かに力を込めた。
 そして。
「ちょっと我慢してね」
 その言葉の意味を尋ねる前に、ジョーの唇が俺の唇に押し当てられていた。
「やめろッ!!」
 耳が痛くなるような大声がしたと同時に玄関へ続く扉が開き、大股で部屋に入ってきたロナウドの姿に俺は混乱したがジョーは余裕綽々だ。ロナウドは俺とジョーの間に腕を入れて引き剥がそうとしたが、ジョーはがっちりと俺を捕まえて離さない。
「クリッキーがいつまでも盗み聞きなんてしてるから、ちょっと当て付けてみたんだごめんね?」
「ふざけるな!お前っ、あんな素敵な彼女さんがいるのに湖宵くんにまで手を出すとはどういう了見だ!」
 違う修羅場が発生してしまっている。慌てて説明しようとすると、ジョーの大きな手が俺の口を塞いだ。アイコンタクト。……何か考えがあるらしい。
「悪いけど、俺クリッキーよりは湖宵くんを大事にする自信あるよ。大体もうクリッキーは湖宵くんのこと捨てたんでしょ?文句言われる筋合い無いと思うけど」
「な?!俺はッ、」
 ジョーが、いつになく真面目な顔で、冷たい声で話している。それに怯んだのか、ロナウドは少し視線を泳がせ口ごもった。
「今すぐ帰ってきてって言って電話にも出なくなった恋人を放って、よくまあきっちり定時まで仕事できるよね?」
「それはっ、湖宵くんなら馬鹿な真似はしないと思って、帰ってから話そうと……」
「クリッキー、……栗木ロナウド。キミは傲慢だ。そこまで蔑ろにして、まだ愛されていると思うんだ?」
「え、」
 虚を突かれたように呆けた声をあげたロナウドに、ジョーが冷たく宣告した。
「一人ぼっちで部屋に閉じ込めて、餌もあげずにほったらかして、まだ湖宵くんが自分の事を好きだと思ってるなんて随分おめでたいよ」
 ――そこで初めて、ロナウドは俺を見た。
「湖宵くんは、……俺のこと、嫌いになったのか……そうか、そうだな……」
 その目が深い悲しみの色に塗り潰されていくのを見て、俺は堪らずジョーの手を押し退けていた。
「そんなことないっ!俺は、俺、ロナウドのことずっと好きだよ、でもっ……!」
「湖宵くん、クリッキーを甘やかしちゃ駄目じゃない。もう少し痛い目見せたっていいくらいだよー?」
 仕方ないなあとでも言いたげに腕の力を緩めたジョーの膝からようやく降りた俺は、今にもすごすごと退散してしまいそうなロナウドの服を捕まえる。
「好きだからっ、ロナウドが好きだから俺、一人で食べるご飯は美味しくないしっ、ベッドは広いしっ、寂しくて、俺っ」
 もうどうしたらいいかわからなくて、俺はロナウドの服を掴んだまま泣き出した。おろおろと俺の肩に触れたり頭を撫でたりしていたロナウドは、思い切ったように俺を抱き寄せ、つっかえつっかえ話し始める。
「俺は、君に酷い事をしていたんだな……君が俺を待っていてくれる事にあぐらをかいて、こんなになるまで気付かずに……」
 ぐりぐりと頭を擦り寄せられる。
「俺だって君が大好きなんだ。信じられないかもしれないが……君を失うのは怖いし、君の気持ちが他に向かう事の恐ろしさを今日初めて知ったよ」
 きつく、俺を抱く腕が震えている事に気付いたのはしばらく経ってから。
「出来るだけ気を付けるようにはするが、俺はこれからもきっと君に寂しい思いをさせる。君の傍にだけは居られない、それでも……俺は、君が、湖宵くんが好きなんだ。……行かないでくれ。俺の……」
 ――俺の、ただ一人、愛しいひと。
 ロナウドの腕の中で、俺は何も言えずにしゃくりあげていた。悲しいのか、苦しいのか、嬉しいのか、何なのか、わからない。
 ただ確かなのは、俺はロナウドから離れたり出来ないって事で、ロナウドも多分俺が居なきゃ駄目だって事だ。
「ロナウド、キスして」
「な、」
 これが愛なのか、恋なのか、それとももっと別の何かなのか。俺にもロナウドにもわからないけど、
「……キス、して」
「っ、わ、わかったから目を閉じてくれ」
 俺たちは多分、これからも、どうしようもなく迷ったり傷付いたりしながら、それでも離れられずに二人この世界で生き続けるのだ。
 ――ロナウドの唇は、少し荒れていた。


「これからは仲良くしようね、二人とも」
「うん、ごめんねジョー……」
「しかしだなジョー!湖宵くんの唇を奪うのはやりすぎだ!」
「いいじゃん減るもんじゃなし、後でクリッキーがたっぷり消毒ちゅーすればいいでしょ」
「そういう問題じゃない!……くっ、湖宵くんの唇を知っているのは俺だけだったのに……」
「えっ」
「ん?」
「ロナウドごめん、俺、ロナウドの前にも付き合ってたひと居た……」
「えっ」
「なんかごめん」
「クリッキーは湖宵くんに夢見すぎだよねえ」
「え、あ、いや問題無いぞ!だって俺が最後の恋人になるからな!」
「えっ」
「い、嫌か?」
「ううん、嫌じゃない、嬉しい……」
「湖宵くん……!」
「はいはいバカップルバカップル」


《終》

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